会社を出て駅までの道のりを半分ほど過ぎた時、ふと嫌な予感がしてバッグの中を覗き込む。
……嫌な予感は見事的中し、私は思わず天を仰いだ。
「携帯忘れた……」
休憩した後に、デスクの引き出しにしまって、そのままバッグに戻すのを忘れていたのだった。
駅まですぐそこという場所まで来たのに、また会社に逆戻りである。
(あーもうっ!!)
私は自分のどんくささを呪いながら、今来た道を逆に辿るのであった。
(田辺さんまだ残ってるかな……。帰っていればいいけど)
さっきの今でもう顔を合わすなんて気まずいったらありゃしない。
もし、まだ残っているようであれば、戻ってきたってことがばれないようにこっそり入って、こっそり帰ろう。
うん、よしよし!!と自分を奮い立たせところで、会社が見えてきた。



