「……君に関係あることかい?」
田辺さんの顔には“詮索されて不愉快”とご丁寧に書かれていた。
どうやら私は踏んではいけない地雷を踏み抜いてしまったらしい。
……でも、もう後には引けない。
「田辺さんと結婚する女性ってどんな人か興味があるんです」
政略結婚とはいえこの性悪男の奥さんになろうだなんてどんな人か気になるじゃない?
武久のお姉さんでもあることだし。
「……仕事をする気がないなら、さっさと帰るんだな」
田辺さんは呆れたようにそう言うと、椅子から立ち上がりブースから出て行ってしまった。
……話す気は毛頭ないと言われたも同然である。
田辺さんらしからぬ一手ではあるが、残念なことに逃げられてしまっては仕方ない。
奥さんの人物像を追及するのは次の機会にとっておくことにして、私は田辺さんの言う通り今日は帰宅することにした。



