折角なので余すところなく堪能させてもらおうと写真をじいっと見つめていると、ちらほら見知った顔があることに気が付く。
「あ、これ……田辺チームの皆さん?」
「はい。結婚式には会社関係の方々にも来て頂いたので」
「そっかあ」
「ここだけの話、僕達夫婦より田辺さんの方が目立って大変でしたよ。特に女性陣からの黄色い悲鳴がすごくて……」
井上くんの背後には現在の田辺チームの同僚の方々や井上くんの友人もいたが、やはり出
席者の中でもひと際目を引かれるのは田辺さんだった。
既婚者だと公言していない以上、女性陣が自分の結婚式の相方にと切望する気持ちはわからないでもない。
(結婚ねえ……)
井上くんは田辺さんが既婚者だって知らないのかな?
田辺さんの秘蔵っ子である井上くんですら知らされていないという事実が田辺さんの結婚、そしてその結婚相手がいかにトップシークレットだということを知らしめる。
「ということで、まだ新婚なので今日は定時で帰らせてもらいますね」
デスクに置いてあった時計を確認すると、既に定時退社時刻を過ぎていた。
井上くんは俊敏な動きでパソコンの電源を落とし、椅子をデスクの下にしまった。
「お疲れ様です!!」
「お疲れ様」
新婚の幸せビームを身体中から溢れさせながら家路につく井上くんの背中を、私は静かに見送ったのである。



