「ったく!!本当に面倒臭い女だな……」
口調はピリ辛でプンプン怒っていても、手つきは優しいってことを私は知っている。
テヘヘ!!ご面倒おかけします!!
私は無抵抗で武久にすべてを委ねた。なにしろ、もう指一本も動かせない。
武久の手によって、ここぞという時しか着ない一張羅のスーツはあっという間に引っぺがされ、シワが出来ないように丁寧にハンガーに掛けられた。
洗い立てのパジャマを着せてもらい、メイク落としで顔をゴシゴシこすられたかと思えば、今度はコットンで化粧水をバシャバシャと塗り付けられ、保湿もバッチリ。
最後にふっかふかの布団をかけてもらえば、天国に行く準備は万端だった。
(添い寝もサービスしてくれたら最高なんだけど……)
淡い期待をしてみたものの、待てど暮らせど武久が布団の中には入ってくる気配はない。
それどころか外出用のジャケットを腕に抱え、ショルダーバッグを肩に引っ掛けていた。
「出かけてくるから、朝は一人で起きろよ?」
「どこ行くの?」
「カルテッド」
「そっかあ……。いってらっしゃ〜い……」
パタンと閉まった寝室のドアに向かって小さく手を振りながら感心してしまう。
(自分の仕事もあるのによくやるよなあ……)
本日の営業は終了しました状態に陥っている私は、5分も経たない内に眠りの世界へと落ちていったのである。



