「ねえねえ。疑うって何のこと?」

やっとこさ武久の隣に並ぶと、私は先ほどの言葉を反芻した結果生じた疑問を素直にぶつけた。

武久はしまったと痛恨の表情で髪をグシャリと掻き上げると、驚くほどそっけなく私を一瞥したのだった。

「なんだっていいだろ?」

うわー。なんか感じ悪―い!!

「そう言われると気になるじゃん!!」

立場が逆転したことで私は俄然強気になり、鬼の首を取ったようにわーわーと騒ぎ立てる。

「ねえ!!ねえ!!な・ん・で?疑うって何のこと?」

鬱陶しいと怒鳴られるのも承知で、武久の周りをぐるぐると回転して説明を求める。

やがて、我慢の限界に達した武久はチッと舌打ちをすると、観念して“疑った”と言った意図を白状したのである。

「あー…俺は……早宮がまだ田辺に気があるんじゃないかって思ったんだよ」

武久はきまりが悪そうにそう言うと、園内の至る所に設置されているマスコット人形のパネルに不自然に目が釘付けになった。