(武久のやつ……妙に勘が鋭いんだから……!!)

思わず生唾を飲み込んで押し黙る。ここで墓穴を掘ったら、折角の計画が水の泡だ。

武久にばれたら余計なことするなって絶対に怒られるし、田辺さんへの敵意が強まるのは必至である。

私は本音半分、嘘半分の言い訳を始めるしかなかった。

「ほら……!!ああ見えても田辺さんってうちの会社のエースだし?学べるうちに学んどかなきゃなって思ってさ~!!私もそろそろ本気出さないとねっ!!」

言葉が上滑りしているのは明白だったが、真実を隠すためには饒舌にならざるを得ない。

ううっ!!仕事熱心を装うのって予想外に疲れる!!

「それだけか?」

「うん……」

探るように見つめられ、若干の後ろめたさを感じつつ頷く。

感情が表に出やすいと常日頃から指摘されているせいか、見つめられるのは苦手だ。

のらりくらりとかわされていることに気付いたのか。

はたまた、しらじらしい弁明を始めた私を見て哀れに思ったのか。

「……ならいい。疑って悪かったよ」

武久は諦めたようにそう言うと、今度こそベンチから立ち上がり出口へと向かいだした。

「あ!!待ってよ!!」

手に汗握る心理戦から突如解放された私は、急いで武久の後を追ったのである。