(ずっとこうしていたいな……)
この数か月、色々なことがありすぎて、何でもないことで笑ったり、ふざけたりすることを忘れていた気がする。
隣にいるこの男も同じことを考えていてくれたらいいのに……。
などと、乙女チックなことを考えていたら園内のスピーカーから物寂し気な音楽が流れ始めた。
気づけば辺りは薄暗くなっていて、あれほど楽しそうにはしゃいでいた子供も疲れ切って親に抱っこされて寝ているではないか。
閉園時間が迫っている園内には、出口に向かう人の群れが出来始めていた。
「そろそろ帰ろっか」
ベンチから立ち上がるように武久を促し、体をほぐすように大きく背伸びしたその時だ。
「急に田辺と働く気になったのはどうしてだ?」
閉園の音楽が流れ続ける中、武久の声だけがやけにくっきりと聞こえた。
「正直に答えろよ」
不審に思われている以上、うろたえるところを見せてはいけない。
最初からそれを聞くためにここまで誘い出されたのだとようやく悟った。



