武久は抱っこしていたお猫様を地面に下すと、不服そうに眉をしかめながら言った。
「言っておくが最初に仕掛けてきたのは、壱の方だぞ」
一方的に悪者のように扱われたことに憤慨しているようである。
「昔から大人に隠れて嫌味三昧よく吹っかけられたぜ。よそでは品行方正の優等生で通っているのが聞いて呆れるぜ。まあ、俺もそこそこ甘やかされていた自覚はあるから怨んじゃいないけどな」
恨み辛みが募っているかと思いきや、よほど思うところがあったのか武久はあっけらかんと言った。
しかし、それも束の間のことだった。
「不仲が決定的になったのは、壱と姉貴の結婚の話が出た頃だ」
お姉さんの話になると、急に声のトーンが変わり険しい表情になっていく。
「武久は結婚に反対だったの?」
「どう考えてもおかしいだろ?壱と姉貴は結婚の話が出るまで、ほとんど口をきいたことがないんだぜ」
えっと……つまり……。



