「早宮……。ちょっと……休憩……!!」
武久は目を回してしまったのか、コーヒーカップを降りた途端に柵に身体を預け、ぜえぜえと肩で息をし始めた。
「大丈夫……?」
バッグからペットボトルの水を取り出し手渡すと、武久はごくごくと喉を鳴らして水を飲み干した。
「もしかして、三半規管弱い系男子だったの?」
「うるせー……。ちょっと休憩だって……言ってんだろ……」
文句を言う声は弱弱しく、いつもの悪態にもキレがない。
武久にも苦手なものがあったのね……。
うーん……。ちょっとはしゃぎすぎた?
しょっぱなから飛ばしすぎたことを少し反省していると、まだ顔が青い武久に腕を引っ張られる。
「ほら、行くぞ。今度はあのでかいやつに乗りたいんだろ?」
武久はそう言うとそのままジェットコースターのレールに沿って歩き出したのだった。
……やせ我慢しているのは明白だった。
それでも、私の好みに付き合ってくれようとする気持ちが嬉しい。
手の込んだ贅沢な大人のデートなんかより、チープな遊園地の方がよっぽど楽しく感じる。
「うん……!!」
……まったく。これが女心の不思議というやつらしい。



