「来たか」
専用ブースの門を叩くと、田辺さんのチームメンバー全員が待っていた。
専用ブースにはデスクが7台。7台のうち6台は2台ずつ向かい合わせに並べられていて、残った1台が一番奥に配置されている。
もちろん、そこに座っているのは田辺さんだ。
(ここが、田辺さんの城か……)
もちろん、感心している場合ではない。
「早宮杏です。今日からよろしくお願いします」
私はそう言って恭しく頭を下げたのだった。
「早速だけど概要を説明しようか。早宮さん、会議室までいいかな?」
「はい」
田辺さんは私を連れてブースを出ると、一番手近な空き会議室に入った。
「よく逃げずに来たね」
人目がなくなるとあっさり善人の仮面を外したのは、共犯者として信頼されているからなのだろうか。
「それで……私はここで何をすればいいんですか?」
何をどう“協力してくれる”のか、具体的なことはなにひとつとして知らされていない。
契約内容を先に確認せずにいたことは、ひとえに私の怠慢である。



