「好きでもねー男にキスされて嫌じゃないのかよ?」

「嫌じゃない……」

思えば最初にキスされたときだって、すっごくびっくりしたけど不思議と嫌悪感はなかった。

互いの想いを確かめるように抱き合ってからどれくらい経っただろうか。

武久に抱き締められていると、じわっと全身があったかくてなって何も考えられなくなる。

優しく髪を梳かれ、胸の鼓動を感じると、この上なくくすぐったく、ずっとこうしていたいと思ってしまう。

他の誰にも感じたことのない感覚……こんなの初めてだった。

弱音も、本音も、心の底から曝け出せるということが、これほどの安心感を与えてくれるのか。

これまでの私は好きになった相手に必要以上に自分をよく見せようと肩肘を張り、外見を取り繕うことばかり考えていた。

御曹司だの、イケメンだの、そんなものばかりに惑わされ、踊らされ、自分を見失うこともしばしば。

でも、武久は違う。

情けないところも、格好悪いところもたくさん見せたのに、それでも私を好きだと言ってくれた。

(嬉しい……)

一度、自覚するともう止まらない。

……武久が好きだ。

行き場のない想いがまた、抱きつく腕の力を強くしていく。