(社長、社長ねえ……)

コーヒーを飲みながら私の中の社長のイメージを総動員してじっくり考えてみた。

高級車で出勤して、社長室からあれこれ指図して、たまにメディアに露出して、パーティーとかで華やかーな人脈を築く……。

想像力が乏しいのはご愛嬌だが、概ねこんな感じ?

「うわ……全然、似合わない」

どれもこれもピンとこなさすぎて、ついげんなりしてしまった。

建築のセンスがあるのは誰もが認めるところだけれども、経営の才能は全くの別物じゃない?

あと、武久は腹芸の類が一番苦手そう。

余計な一言で交渉を台無しにする姿が目に浮かぶようである。

「ああ、俺もそう思う」

私の反応はなかば予想通りだったのか、武久はクツクツと喉の奥を鳴らして笑った。

「社長に向いているやつが社長になればいいんだって今でも思ってる。でも、クソ親父にはどうしても分からないらしい」

武久は諦めたように大きくため息をついた。