「ここで休んでてよ。まだしばらくかかると思うからさ」

私と30分ほど話をすると緒方さんは私を仮眠用の簡易ベッドに案内し、武久同様仲間のいるミーティングルームへと向かった。

どことなく弾んだ話し声がうっすら聞こえる中、残された私は埃っぽい毛布を被って簡易ベッドに横になって武久の学生時代に想いを馳せた。

武久はどんな学生だったんだろう。

モテたのかな?

ああでも、目つきも口も悪いから近づいても怖がられていたかも。

そう思うとなんでか急に笑えた。

御曹司の武久なんて得体の知れない存在だと思いこんでいたのに、ここにきて初めて私となんら変わらないごく当たり前の人間なのだと感じられた。

一体なにをごちゃごちゃ悩んでいたんだろう?

……知らないならば、これから知ればいい。

頭の中のモヤモヤが久しぶりに晴れて、私はこの上なくスッキリとした気分で目を瞑ったのだった。