(どこまで行くつもりだろう……)

車両同士をつなぐ扉から吊革に掴まるあいつの様子を伺うこと、5駅。

武久はこれといった特徴もない駅で電車を降りると、どこにも寄らずに歩いて行き、逢引きに使うにしては不似合いな雑居ビルの中へと姿を消したのだった。

エレベーターが止まった階数をチェックして、郵便ポストに掲示してあるテナント名を確かめる。

(“株式会社カルテット”?)

当然のことながら聞き覚えのない会社名である。

一応携帯で会社名と住所を入力して調べてみたが、ちゃんとホームページも存在している。

どうやら逢引きというのは私の勝手な勘違いだったようである。

そうなると今度は、武久の不可解な行動の理由が分からなくなってくる。

……こんな夜更けに一体何をしているのだろう?

疑問ばかりが頭に浮かんできてひたすら首を傾げていた私は、次の瞬間“株式会社カルテット”の事業内容に目が釘付けになった。