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(破滅か……)
田辺さんと真正面からやりあった後では、とてもじゃないが残業の続きをする気分にはなれず、途中で切り上げると武久の待つマンションまでもたもたと歩いていく。
“破滅”という物騒な単語は、まるで呪いのように私の心を縛りつけた。
知らなかったではもう済まされない。武久が払った代償は、それほどまでに大きい。
窮地に陥っているとも知らず、ぬくぬくと働いていたことが、急に後ろめたくてたまらなくなる。
武久は周防の御曹司だ。
周防建設の頂点に立つことを約束されている人間であり、それはもう変えられない事実である。
武久に後継者失格の烙印が押されてしまったら……私はきっと自分で自分を許せなくなる。



