(どうしよう……っ……)
あれほどいきり立っていたというのに、お見合いの話を知って今度は動揺を隠せないでいる。
「ほら、さっきまでの威勢はどうした?」
泣き出す寸前の情けない面でも拝みたかったのか、顎に手を掛けられ背けていた顔を無理やり田辺さんの方へ向かせられる。
「触んないでっ!!」
抗議するようにキッと睨みつけたけれど、これしきの事で怯むような人ではなかった。
「イイことを教えてあげよう……」
弱った獲物には更に鞭をくれてやるのが信条なのか、田辺さんは追撃の手を緩めようとはしない。唇の端を上げて薄く笑うと、決定的な一撃を食らわせる。
「永輝を破滅させるのは僕ではなく……君の役目さ」
反論しようとしてとっさに口を開いたが、声が出てこなかった。
田辺さんに挑発されていることは分かっていたが、何を言い返したところで虚しくなるだけ。
「残業もほどほどにね?」
田辺さんはうつむく私を見て満足したのか、みせかけだけの労いの言葉をかけて帰っていったのだった。



