「僕と君が仲良くデートしたあの日、永輝は戸田建設のご令嬢と見合いをする予定だったんだよ」
「お見合い……?あの武久が……!?」
俄かには信じがたい話である。
武久が自分から好き好んでお見合いをするようには思えない。ということは、半ば強制されたお見合いってことだ。
田辺さんお得意の嘘と策略だという可能性も否定できないけれど、その一方で合点がいく部分もある。
(だから周防社長はあんなに怒ってたんだ……)
見合いをすっぽかして私と一緒にいたんだもん。そりゃあ、周防社長から目の敵にされるはずだわ。
田辺さんがこの場にいなかったら、あちゃーっと頭を抱えていたことであろう。
「永輝に君の居場所を教えたのは僕さ。まさかこうも上手くいくとは思わなかったな。単純な男だよ、あいつも」
つまり、武久がタイミングよく現れたのは偶然じゃなかったということ?
最初から最後まで田辺さんの手のひらの上で転がされていたのかと思うと愕然としてしまう。
「まあ、もっと意外だったのは永輝が福子様を持ち出してでも君を守りたがったことかな?君は永輝によほど大事にされているらしい」
大事にされていると言われても、ちっとも嬉しくなかった。
お見合いはおじゃんになり、周防社長の怒りを買い、私というお荷物を背負い込み、後継者レースは武久にどんどんと不利になっていく。
……私のせいで。



