「手伝おうか?」
マドンナとのやりとりを聞いていたわかっちがこっそりと耳打ちしてくる。
「大丈夫。わかっち、今日デートでしょ?」
「わかる?」
……わかりますとも。
おニューと思しきワンピースを着ているわかっちは誰よりもわかりやすい恋する乙女ですもの。
「私のことはいいから楽しんできなよ」
ひとの恋路の邪魔するほど野暮じゃないデス。
わかっちとその彼氏さんは互いに忙しいのか、デートする時間をやりくりするのも一苦労だっていつも聞かされてるし。
「でも……」
「大丈夫だって!!」
こちらのことは気にするなとわかっちの背中を叩いて檄を飛ばす。
それに、私の仕事を手伝ったってバレたら、わかっちまでマドンナから冷遇されてしまうだろう。
自分の作業を一旦中断し、山の上からひとつ書類をとってペラペラとめくる。
パッと見た感じ、簡単な修正ばかりで難しいものはない。これなら私ひとりでもなんとかなりそうだ。
(くっそう……マドンナめ……)
……問題なのは量が量だけに、どれだけの時間がかかるのかということである。



