「ねえ、杏?そんな武久と5年も一緒にいといて、本当に一度も男を感じたことなかったの?」
わかっちの人差し指はまっすぐ私の額をつついた。
心当たりはないのかと問いかけられ、フラッシュバックするのは、キスをされた時のこと、そして背後から抱きしめられた時のことだった。
で、でも!!あれはっ!!色々あって精神的に弱ってたし!!
いわゆる、吊り橋効果ってやつだ!!
武久に男を感じたなんて、断じてありえないっ!!
私は頭の上ににわかに発生したピンク色のもやもやを急いでかき消したのである。
その様子を見るやいなやわかっちはこりゃだめだと早々に切りをつけた。
「とにかく、一緒に住んでることは周りにばれないように気を付けた方がいいわね。でないと酷い目に遭うわよ」
「……同感」
私はわかっちの忠告に珍しく素直に頷いたのだった。



