「普通に寝坊w」
格好つけて言う。
俺を挟んで行われる会話を聞いて、やっぱ平和だなと改めて思う。
「あっ!そうそう!聞いて、大ニュース!!」
俺と理那は耳だけを太一に向ける。
「今さっき、廊下で山下(やました)先輩と西野(にしの)が手繋いで歩いてたんだって!!!」
「はっ?まじで?!」
「あの山下先輩と茜(あかね)が?!」
2人は、勢いよく体を太一に向ける。
1番端の前列で大騒ぎする3人。
山下先輩は俺と同じサッカー部。
1年上の先輩でゴールキーパー。
金髪で、ツーブロが似合う。
この学校では、チャラそうランキング上位に入るほど見た目がチャラいが、実際はチャラくない。
逆に、怖いぐらい優しくて、先輩として、頼れる人だ。
西野茜は同級生。
比較的大人しい方で、あまり目立たない。
眼鏡美人で、成績優秀。
ストレートの黒髪を惜しみなく披露していて、隠れファンも多いと聞く。
そんな見た目正反対の2人が付き合っているから、驚きである。
「いいな〜...私も彼氏欲し〜!!」
と項垂れる。
何故か、俺は何とも言えない緊張感に襲われる。
.....苦しい。
「...ははっ!りなは一生無理なんじゃね?w女っぽくねぇしww」
太一が茶化す。
また、よく分からない正義感を感じる。
恋は人をおかしくさせるって、上手く言ったなと思う。
はぁ.....しんど。
「まぁ?太一は、私の魅力を知らないからな〜www」
またまた、平和な会話が始まる。
俺は、何もする事が無いので予習する。
英語の教科書を開いた途端
「学級始めるぞー席着けー!」
担任の都村(とむら)先生が入ってきた。
