視界が段々明るくなってきた。

真っ白な世界に色がついてくる。

真っ白なタイル状の天井。

点滴、心電図、白衣を着た黒髪の看護師。

看護師がはっと振り向き、

「青木さん?!きこえますか?!」

私は頷こうと首を曲げようとするが、うまく曲がらない。

「先生!青木さんが!!」

パタパタと病室から走り出していく看護師。

自分の置かれた状況にやっと理解出来た。

…私は、失敗したんだ。

その絶望感とともに、鈍い痛みも出てくる。

口元の違和感は酸素マスク。

鼻にはチューブが通されているし、頭は痛い。

足も高く吊るされている。

手は切り傷やかすり傷こそあるものの、折れてはいないようだ。

はぁ、と口元だけでため息をつく。

こんな中途半端な死に方。

1番やりたくなかった。

そう思うと、涙が出てくる。

「おい、何泣いてんだよ」

突然声が聞こえて、視線をずらす。

窓にもたれるようにして、私を見下ろしている、男…?

真っ黒なスーツを身にまとっていて、逆光で顔はよく見えない。

「あんた、自殺しそこなったんだろ?」

男は、胸ポケットから手帳を取り出してページをめくる。

「青木 凛音。

2001年 2月20日生まれ

父、青木 和也は有名企業の社長。