キンヨウビノヒミツ

誰か、私に金曜日何があったか教えて。切実に。


誰も答えてくれない疑問を零して、私も渋々と着替えを始めた。


佐伯さんもだけど私も社内ではしっかり会社用の服に着替えをしている。


制服はないので、安いパンツとシャツにカーディガンのようなシンプルな格好だけど。


なぜかというと、社内での在庫管理や荷物を倉庫に運んだりする作業は、人手がないときには私たちにも回ってくるからだ。


『劇薬』『引火性』『毒物』そんな言葉はもちろん、時々ドクロマークなんてついた薬品を扱う…となると、何となく小洒落た私服でするのは憚られてしまう。


一度、キシレンという薬品の瓶を落っことして割った事があったのだけど、スカートにかかって酷い沁みになったし、独特の薬品臭は落ちないしで物凄くショックだった。


しかもゴム手袋は溶けて破けるし、どんなに水拭きをしても油のように床がぬるぬるして滑って危険で、外回りで返ってきた営業さんに「エタノールで拭けば良いよ」と言われるまで恐る恐る廊下を歩く羽目になった。


エタノールで拭いたら滑らなくなったけれど、床に塗ってあったワックスはキシレンが零れた所だけ綺麗に剥がれていた。


まぁ置いといて。


それ以来、ちゃんと職場では職場用の服に着替える事にしたのだ。


着替えを終えて、向かうのは休憩室。


前日にタオルや布巾を漂白剤につけているから、それを洗って、ポットにお湯を沸かして、コーヒーメーカーをセットして…と一通りの仕事を済ませて休憩室を後にしようとした所で、手をかけようとしたドアが勝手に開いた。