キンヨウビノヒミツ


「どっちでもいいんじゃね?」


…そんなもん?


あ、前橋君って記念日とか一切気にしなさそう。


私も…あんまり記念日にこだわる方じゃないけど。


「ねぇ、先週の金曜日、他には何…話したの?」


私の知らない、金曜日。


いろんなことを話したみたいなのに、覚えていない金曜日。


前橋君は私をじっと見たあと、フッと笑う。


「教えない」


「え、教えてよ!」


「やだ」


「えー、良いじゃん!私のことなんだから」


「そのうち思い出すだろ?絵奈のことなんだから」

思い出せるもんなら思い出してみな?そう言われた気がして膨れると、クスクス笑われた。


「俺、暫く寝るから」


そんな言葉と共に、肩にかかってくる重み。


実家とは逆方向に走る新幹線。


すぐ傍らで聞こえる、規則的な寝息。


今更だけど、…私、結構な人生の超特急に乗ってない?


そう思うのに、何だか楽しみなワクワク感が心に満ちている。


刹那的な恋より、安心感が欲しいと思っているのに、付き合ってすぐに仕事を辞めて追いかけるなんてらしくないかな。


一緒に行っちゃって、いいよね?


良いんだよね?


軽く重ねていた手をぎゅっと握ると、眠っているのに軽く握り返してくれる。