キンヨウビノヒミツ


決定的な言葉があったわけじゃない。


好きで好きでたまらないとか、そんなじゃない。


だけど、確実に心の中に入り込んでくる。


この心地良い手のぬくもりも、隣にいるとなんだか安心する空気も。


離れがたく感じてしまう。


だってこれから、2人でスーパーで買い物するんでしょ…?


手、繋いでスーパーで買い物なんてさ。


だめだよ、考えただけで、顔がゆでだこになるよ。


簡単に作れるパスタにすることにして材料を買って、このなんともいえない空気を打破したくて通路に並んでいたワインを手に取ってかごに入れようとした私の手から、ワインが消えた。


「飲まないよ」


見上げると、ちょっと悪戯っぽい笑みの前橋君。


私の耳元に唇を寄せて低く囁いた。


「飲んだら、忘れるだろ?だからダメ」


あぁ、もうだからさ。


何でそういう事言うかな。


真っ赤になった私をクスッと笑って、前橋君はワインを棚に戻した。