キンヨウビノヒミツ

チラチラと横目で気にしながら居ると、ガチャっと部屋のドアが開いて髪を拭きながら前橋君が戻ってきた。


「あ、あぁ。読んでいいよ」


「へ?!」


私、そんなに顔に出てた?


「昨夜も読みたがってたから。
で、栄さんのだって言ったら呪われそうだからやめとくって」


…呪いって。


「これ以上男運悪くなったら困るって」


さも面白そうに前橋君が喉を鳴らして笑う。


…いや、確かにこれ以上男運悪くなったら困るけど。


そして、確かに呪われそうだけど。


だからって言っちゃいすぎでしょ、酔っ払いの私。


「いや、そのね。嫌いってワケじゃないんだよ。
ただちょっと…」


同僚であり先輩なので一応フォローを入れようと口を開くと、前橋君がくくっと小さく笑う。


「判るよ。
悪い人じゃないけど、ちょっとってのは判る。
でも、漫画に罪はないから読めば?
そんな大層な呪いもかかってないと思うし」


「うんー…でもいいや。
今読んでもどうせ途中までしか読めないし」


高校生の頃なんて8年も前だからもう細かい内容は忘れてしまっている。


読むなら最初から読みたい。


今から読み直したって、最後までなんて読めやしない。


そんな私の返事に前橋君は「あぁ」と納得したような相槌をくれた後、小さく笑って言った。


「読みに来れば?
又貸しすんのも微妙だし、会社に持ってくのもめんどくさいから」