「おはようございます。四葉細胞から訂正の発注書が届いてるはずなんですけどありますか?
朝一で持って行くので、納品書お願いします」
前橋君はそう告げて、納品の準備をするために倉庫に向かっていった。
「んー、私のトコには無いな。井上さんトコに無い?」
ぱらぱらと手元のファックスを眺めて佐伯さん。
…ああ、もう。
前橋君と極力関わりたくないのに。
「ありました」
私は応えながら、納品書の入力をする。
さっさと終わらせる。
目を合わせずに終わらせる。
呪文のように心の中で唱えながら、忌まわしきキシレン 一斗缶×8なんていう注文を入力した。
…ってか、毎度毎度疑問に思っているんだけど、キシレン一斗缶って…何に使うの…?
私はスカートの恨みがあるから完全に敵なんだけれど、キシレン。
まぁ、扱っているのが化学薬品だから、私の知る由もない用途が沢山あるのだろう。
出力が終わった納品書と発注書を照らし合わせて入力ミスがないことを確認して、倉庫に居る前橋君に声だけかけて台車の上に納品書を置いてさっさと仕事に戻る。
「…井上、ありがとう」
一瞬間があったけれど、いつも通りにお礼を言って前橋君が事務室を出て行った頃には、ほんの数分の出来事なはずなのに一気に消耗していた。

