佐伯「あの」

凜咲「はい？」

佐伯「下の名前」

凜咲「ああ、私の下の名前は凜咲です。」

佐伯「ありがとう」


しばらく続く沈黙。

観察ノートに書き込む。

無口…っと。

暇になって、ふと窓の外を眺める。

(桜はまだ蕾なのかあ…。早く咲かないかなあ…)

桜を見ることも飽き始め、パソコンを開く。溜まってる仕事をこなさなければならないことに気がついた。
ふと顔を見上げると佐伯さんは静かに本を読んでいた。
難しそうな分厚い本。
きっと字も細かいんだろうな。
どんな本だろう？

凜咲「佐伯さん。」

佐伯「…」

凜咲「どんな本を読んでいるんですか？」

佐伯「恋の話。」

凜咲「へぇ…。」

正直意外だと思いつつ口には出さなかった。
口に出したら睨まれそうだったから。

そろそろ集中しようとパソコンに文字を打ち始める。
窓から差し込む暖かい春の日差しと昼過ぎの心地よい眠気で瞼が重くなってきた。
監視しなければいけないと思いつつ私は眠りの世界に入っていった。