「親父の死を傷む奴などおらんかった。どちらかというと親父が死んだことにより、実権を握ろうとしている連中が盛大に挙げた葬儀だったんじゃよ。」
海を見ながら話していたが、ちらっと藤吉郎を見るとじっとこちらを見ていた。
「外にも内にも敵が多いこの状況で、わしが親父の果たせなかった夢をわしの夢として叶えるという意味と、実権を握ろうとしている連中への宣戦布告のようなものじゃな。まぁ死んだ親父に対する怒りもあったが。」
話終えると藤吉郎はまたくすくすと笑っていた。
「まぁ、周りからにはそんな事伝わらず、平手のじぃに咎められたがな。」
「ふふっ。そうでしょうね。でもまぁ…」
ゆっくりとわしの肩に頭を預けてくる藤吉郎。軽蔑した訳でも馬鹿にしたわけでも無いその声に、少し安心する。
「織田殿らしいです。」
にこっと笑うその顔に思わず口付けをしたくなった。
悲しみが見えなかった今の笑顔。
可愛くて仕方がなかった。

