あれから十日後、朝一番に馬に乗り海へと向かった。
普段ならお供を何人も連れていくのが普通なのだが、藤吉郎が女だと知られると不味いので、二人で海へと向かった。
昼になる前には、近くの海に辿り着いた。
馬を繋ぎ、藤吉郎と二人で海へと歩いていく。
「んー!いいですねぇ。海は好きです。」
笑顔で振り替える藤吉郎。そんな動作一つ一つが可愛らしい。思わず微笑んでると、藤吉郎は不思議そうな顔をして覗きこんでくる。
「何が面白いのです?」
「いや、藤吉が楽しそうにしておるから。嬉しかっただけじゃよ。」
誰もいない海。
綺麗なまでに青々と煌めいているその様は見ていて飽きない。
「織田殿はお優しい。」
流れ着いたのか、それとも元々あるのかは分からない木の上に並んで座る。
座ったと同時に藤吉郎が口を開いた。
「そうか?」
「ええ。だって毎日私を気遣ってくれたり、こうして海につれてきてくれたり。」
体を後ろに反らしながら、藤吉郎は空を見上げる。
「きっと毎日考えてくれてるのでしょう?どうしたらひと月の間に私が思い止まってくれるか。」

