「…そうですねぇ。あっ海に行きたいです。」 ここからそう海は遠くなどない。 馬に乗っていけば、その日のうちに帰れるだろう。一日何も予定を入れなければ行ける。 「構わん。なんだ、釣りでもしたいのか?」 「いえ、ただ眺めたいのです。」 「分かった。怪我が良くなったらな。ただし、外に出る際は男の格好をしろ。ひと月経ったら織田家に男に扮して仕えるのやもしれんのだから。」 「ふふっ。分かりました。」 そう答えた藤吉郎。 今だけはなんとなく、心から喜んでいるとそう思えた。