「それにしても奥方をほっといて、私を匿ったりしても良いのですか?しかも毎夜私のところで寝ていますし。」
「別に構わん。所詮政略結婚の間柄じゃ。わしが好きなのは藤吉じゃしな。」
そんな会話をしながら、藤吉郎を後ろから抱き締める。藤吉郎は今まで多少の読み書きしか出来なかったようで、まだ完治しないので部屋で読み書きを教えていた。
机に向かう藤吉郎を後ろから抱き締める。
こんなにも幸せを感じてしまうのに、藤吉郎はこの瞬間でも拷問のことを思い出してしまってるんじゃないかと悲しくなる。
「思ったのですが、織田殿は私のどのようなところが好きなのです?こんな薄汚れた事しかしてきていない農民の出の娘など。」
わしの膝の上で少し向きを横に変えながら振り替える藤吉郎。
「初めて会ったとき。お主はわしをうつけではなく、野心に溢れていると言っていたな。」
「ええ、言いました。」
「その後、天下を取るのだろうと。そのような事を言ってくれたのはお主が初めてでな。」
「おや、天下など取る気は無いのですか?」
「いや、取る。しかし、それを信じて言葉にしてくれたのはお主だけじゃ。それから惹かれていったんじゃよ。」
藤吉郎は体をゆっくりとわしの胸に預けてくる。
わしの肩に頭を預け、可愛らしく笑う。

