それからというものいられる間は藤吉郎の部屋へと向かっていた。
「どうだ?怪我の方は?」
「平気ですよ。」
痛々しいまでの背中の傷。それ以外にもまだ生えてこない爪や、青あざが目立つ。骨折など、そう簡単に治るものでもない。
間違いなく痛いのだろう。それをおくびにも出さない藤吉郎。しかしその見える傷なんかよりも、心の傷の方が大きいのだろう。
藤吉郎が何度も遠くを見ているのを見ると心が苦しくなってくる。
しかし藤吉郎は来た日以来、心を許してくれたのか抱き締めても怖がらなくなった。
失ってしまうのが怖くて、共に夜は寝るようにしているのだが、夜になると嫌でも思い出すのだろう。
藤吉郎は震えていることが多かった。
うなされることも多い。
しかしゆっくりと優しく抱き締めると、徐々に震えが収まっていくのが分かった。
「わしに抱き締められるのは嫌じゃないんか?」
「織田殿に抱き締められると、なんだか落ち着くんですよね。」
そう笑う藤吉郎に心が踊る。しかしそれでも藤吉郎は悲しげで辛そうだった。
藤吉郎が心の底から笑うなどもう無理なのではないかと思ってしまう。
己の心が折れてしまうようでは、藤吉郎を立ち直らせるなど無理だというのに。
分かっているのに、心が折れてしまいそうになる。

