「男を憎んでおるのだろう?ならば、気が済むように痛め付けながらわしを殺せ。」
「何を言って…」
「わしも好きな女子が辛い思いをしたまま、全てを背負い込み死ぬなど耐えられん。それに好きな女子も救えぬのに、天下など取れんだろうからな。ならば、共に死んだ方がましじゃ。」
そういうと藤吉郎はぽかんと口を開け、訳がわからないといった顔をしている。
「わしは本気じゃぞ?」
そう真っ直ぐに言うと藤吉郎はふっと笑った。
ここに来て初めて藤吉郎は普通に笑った。
その笑顔は壊れそうな感じではなく、可愛らしく綺麗に笑う。呆れているようではあったが。
「やはり織田殿は不思議なお方。普通共に死ぬだの、殺せだの言いませんよ。」
「わしは本気なんじゃが。」
「痛め付けたとしても?」
「ああ、受け入れよう。」
真剣に藤吉郎に伝わるように言うと、藤吉郎はまた、今度はくすくすと笑う。
「ふふっ。なんだか、少し織田殿を見てみたくなってしまいました。」
口元の笑みを可愛らしく手で隠し、くすくすと笑っている藤吉郎を見ていたら安心してきた。
「本当か!?」
「ええ、仕方がないですね。ひと月だけでしたら待っても良いです。」
「そうか…!良かった…。」
ほっと肩を落とすと、藤吉郎は笑うのを止め、真剣な顔で見てくる。
「ひと月経っても死にたいと思ったら、その時は私一人でひっそりと死なせてくだされ。」
「……分かった。」
そう約束を交わした。

