「ならん。」
「え?」
「……死んでは、ならん。」
そう口にして、初めてこれが自分の本心なのだと気づいた。気づいたら、どんどんとその思いが溢れていく。
切実に死んでほしくないと願ってしまう。
「まだ私は織田殿の家臣ではありません。ですから、織田殿には関係の無い話です。」
そう淡々と話す藤吉郎に、我慢が出来ず怖がられるのが分かっていながらも優しく抱き締めた。
案の定藤吉郎は恐がり嫌がったが、それでも思いが通じたのか震えながらも大人しくなる。
「これなら関係ないなど言えぬだろう?」
「抱き締めた…ところで…」
「好き…なんじゃ。お主を失いたくない。」
「織田殿…?」
「頼む、死なんでくれ。」
そう小さく苦しく囁くように口にする。
それほどまでに、藤吉郎が己の中で大きくなっていた。
こんなこと言ったところで藤吉郎の傷は少しも癒えるはずなどない。
そんなことは分かっているし、死にたいと思う気持ちを止めることなど出来ないだろう。
しかし少しでも自分の想いが藤吉郎に死ぬことを思い留まらせてくれたならと願う。

