藤吉郎は散々うなされ嫌な汗をかいていた。そして次の日の夕方頃に目覚めた。
「……ここは…?……織田殿っ?」
酷く藤吉郎は驚いた。恐らく拷問する場所で気を失ったのだろう。
青い顔をした藤吉郎の乱れた髪を撫でようと手を伸ばす。
すると藤吉郎は反射的に手を拒み怯えた。震えていたのだ。不意に見えた暗く光らないその瞳を見ていたら、心苦しくなってくる。
「すまん。怖がらすつもりは無かったんじゃが。」
行く場所の無くなった手をゆっくりと戻す。
「いえ……。あの、これはどういう。」
藤吉郎は起きようと試みたが、体が痛かったのか顔をしかめるので、寝ていろと言う。
「お主が拷問されていると、元康殿から聞いてな。忍に助けさせた。」
「そうでしたか…。本当にありがとうございます。でも…」
「どうした?」
礼を述べてから口ごもる藤吉郎。
直後、痛々しい笑みを浮かべた。
「藤吉……?」
そんな笑顔見たくなど無かった。辛そうで今にも壊れてしまいそうなそんな笑顔。
彼女は確かに今までも作り笑いが上手で、いつもそれを張り付けていた。
しかし今浮かべているのは、絶望という言葉しか思い浮かばない笑みだった。
「助けて頂いて有り難いのですが、もう死にたいのです。」
そうはっきりと死を口にした。

