樫の木の恋(中)



十日もしない内に藤吉郎は運ばれてきた。
言葉通り夜中に本当に運ばれてやってきたのだ。

それほどまでに藤吉郎はぐったりとしていた。

着物は血にまみれ、べっとりとついている。青あざが顔や手足に見られ、拷問の酷さが伺える。

「女子にここまでやるか…!」

思わず口にしていた。

すぐに藤吉郎を普段から使わない部屋へと布団を敷き、寝かせる。
夜中にも関わらず、医者を呼びつけ診療させる。

「…これは酷い…。」

医者がそう呟いたのが分かった。

「どうだ?」

「気を失っているようじゃな。爪は剥がされておるし、殴られた痕や切られた痕ばかり。腕と指の骨も折れとるな。一応全て固定して清潔にして包帯をしておいたが…。」

「他にもあるのか?」

「流産した痕が見られる。」

「は?」

「恐らくつい最近だな。」

十五くらいにしか見えない藤吉郎。それが流産の痕がある?
理由などはっきりとしていた。
恐らく半年の間に、犯され身籠ったが、そのまま拷問にあい流れてしまったのだろう。

この時今川家は潰さねばならない。そう心に誓った。