樫の木の恋(中)




それから半年程経っていた。

藤吉郎は織田家に来るのをやめたのだなと思い始めていた。
彼女は賢いし、恐らく気も強い。
男よりも心に向上心を燃やしている。

そんな藤吉郎を配下にしたかったのにな。

そう思っていた頃、一通の文が届いた。

松平元康からだった。

「っ…!」

文には藤吉郎が捕らえられ、拷問をされているとの内容だった。

松平元康は岡崎城に住んでいたため、駿府城で捕らえられていた藤吉郎に気づくのが遅くなったのだ。

しかも文の中に今川氏真に求婚を迫られ断ったからと書いてあった。

それを見た瞬間血が沸いたかと思うほどだった。





至急忍に調べさせた上、藤吉郎をばれぬよう救えと命令した。