そんな中、秀吉殿が後ろを振り向きそれがしに小さく話しかけてくる。
「のぉ、半兵衛。丘に散り散りに見えぬよう兵を布陣して、丘の上から鉄砲隊で撃つというのはどうじゃろうか?」
確かに散り散りに丘の上から鉄砲で撃つのは良い手かもしれない。しかし向こうは騎馬隊が主で来るだろう。
防御しきれない鉄砲隊では、こちらの被害も甚大になりかねない。
そこで一ついい手が浮かんだ。
「でしたら、小川を挟んで両側の斜面を削って馬が登れぬよう土塁を作り馬防柵を作るのはどうでしょう?そうすれば鉄砲隊を主力として使えます。」
「なるほど…。ふふっさすがは我が軍師。頼りになる。」
そう言って一瞬柔らかく笑ったがすぐに顔を引き締め、体を元に戻した。
秀吉殿が着ている黒い甲冑は、綺麗に黒光りしていて秀吉殿が女子だということを忘れさせる。
それほど秀吉殿は凛々しかった。

