鳥居強右衛門の最後は徳川家のみならず、織田家にもその話は広まった。
そしてそれは両家を奮起させたのだった。
織田、徳川軍は二日後には設楽原に着陣した。
此度の戦いには織田家からは、柴田殿、丹羽殿、明智殿、滝川一益殿、佐々成政殿、織田信忠殿などが加わっていた。
勿論、秀吉殿も召集されていた。
徳川家からは徳川信康殿、石川数正殿、本多忠勝殿、榊原康政殿、酒井忠次殿などが参戦していた。
そしてこの主要な面々が集まった軍議は、あまりにも異様で恐ろしい程だった。
そんな中で秀吉殿は、異様な雰囲気を放っていた。
大殿のすぐ側に座り、その綺麗な顔は少し口角を上げ氷のような冷たさを醸し出していた。
「設楽原は原と言っても、小川や丘が多くて武田軍の奥まで見えない…。どうされましょう?」
最初に口を開いたのは柴田殿だった。
大殿も家康殿も難しい顔をしていた。敵が奥まで見えないこの状況は確かによろしくはない。
しかしたいした案も思い浮かばなかった。
「一ヶ所にまとめますか?」
「いや、此度は少しも残さず叩いておきたい。それでは逃れてしまう兵ばかりじゃ…。」
大殿は呟くように柴田殿に返答する。
頭を皆悩ませていた。

