強右衛門は勝頼の指示通り、現状を吐かせるために拷問を受けていた。
「吐いてしまえば楽になれるぞ?」
殴られ蹴られ。血がところどころから出ていた。
別に徳川、織田軍は三万八千いるのだ。一万と少ししかいない武田軍に、これから援軍が来ると教えたところで問題はない。落城を急ぐだけだ。
だからすぐに吐いたのだ。
しかしその拷問もそう長くは続かなかった。
勝頼が来て、こう言い放った。
「お前を磔にして城の前に突き出す。そしたら“援軍は来ない諦めて城を明け渡せ”と叫べ。」
「は?」
「そうすればお前の命だけは助けてやろう。」
強右衛門はしばらく黙って考えた後、首を縦に振った。
勝頼は内心落胆していた。
先程見たときのあの目は何だったのだろうと。
この取引に応じるということは、自分の命が惜しいということだ。
己の命惜しさに、仲間を売るか。
少し悲しかった。

