樫の木の恋(中)



速やかに家康殿に面会が叶い、大広間へと強右衛門は向かうと徳川家臣団と織田家臣団が待機していた。

「強右衛門か。」

その威圧感漂う家臣たちの中で、優しさやおおらかさを感じさせるのが家康殿だった。

「長篠城は兵糧蔵が焼かれ、落城寸前にございます!すぐに出兵してくだされ!と、貞昌殿からの伝言にございます!」

強右衛門の鬼気迫る訴えに、それぞれの家臣達はぎらりと視線を強右衛門に向ける。

「ああ、信長殿も来てくれたし、すぐに長篠城へ向かおう!」

家康のその答えに強右衛門は本当に嬉しかった。

「強右衛門、お主はすぐに戻って、長篠城の者にすぐに三万の兵が来るから持ちこたえろと伝えてこい。出来るか?」

「はい。やります。」

本当は休みたかったし、もう体もぼろぼろだった。
しかし貞昌殿が今か今かと待っている。早く向かわねばと大広間を飛び出して城の中を走っていった。