なんだかんだ秀吉殿は明智殿が変な雰囲気を出さなければ、なかなかに心を許している。
明智殿は金ヶ崎の退き口以来、戦で秀吉殿と組むことが多かったし、戦での明智殿の采配や腕を秀吉殿は高く評価していて信頼している。

それが少し不安な上に、色男の明智殿と仲良くされるのは妬けてくる。それでなくとも以前は脅されていたとはいえ、明智殿と口付けまでしていた仲なのだから。

「忠犬~。癒して。」

こうやって秀吉殿が人前で寝転がったり、素を出したりする人は限られている。
その中に明智殿が入っていると思うと口惜しい。

「秀吉殿、着物少しはだけてますよ。」

「別にさらし巻いておるし。」

そんな風にはだけて色っぽい秀吉殿を明智殿などに見せたくない。転がって寄ってくる秀吉殿の着物をすっと直す。

「むっ半兵衛は気にしぃじゃなぁ。」

言いながらすっと体を起こした秀吉殿は、いきなり後ろに引っ張られるように倒れた。
いや明智殿が秀吉殿を抱き寄せたのだ。

「……明智殿。」

秀吉殿が顔を上に向けると、明智殿との顔が近くなる。

「明智殿、やめてくだされ。秀吉殿を離してください。」

「秀吉はいい香りじゃのぉ。」

秀吉殿の髪に顔を埋める明智殿にたいして、秀吉殿はほとんど諦めたかのように抵抗をしない。