「そうじゃ秀吉。お主この間の傷、もう平気か?」
少し素っ気ない声で、大殿が右手の人差し指で、自分の首を指し示す。あの日、滝川殿に切られた傷は本当にすぐに塞がっていた。
まぁそもそもそんなに大きな傷ではなかったのだ。
しかしそれでも大殿は心配だったのだろうな。
「ほら、もう平気です。」
ほらと言いながら、首元を見せる秀吉殿。
「ほう…。野良犬に噛まれたにしちゃ、綺麗な傷だなぁ?」
その瞬間秀吉殿は珍しくやってしまったという顔をした。大殿としてもそれが狙いだったのだろう。
傷を負って、大殿に知られた日には包帯を巻いていたから追求などしなかった。
口角を上げ、にやっと秀吉殿を見る大殿。
「ったく、もう既に光秀から聞いておる。」
「えっ明智殿が言ってしまったのですか!」
「ああ、まぁな。一益に刀を押し付けられたのだろう?」
「ええ…まぁ。」
秀吉殿は、明智殿に苛つきながらも大殿の問いに答える。もう既に知られていると思っていなかった秀吉殿は、今後どう大殿に知ってもらうかという計画が飛んでしまったのだろう。
「秀吉、あまり無茶をして、半兵衛を困らせるなよ?」
「べ、別に困らせて無いですもん。」
「お主が怪我するたんび、無茶するたんびに半兵衛は肝を冷やしておるのじゃぞ?なぁ半兵衛!」
「ええ。そうですよ秀吉殿。なるべく大人しく頼みます。」
「う、うぐぅ。ぜ、善処します。」
大殿とそれがしから責められた秀吉殿は、所在無さ気に縮こまっていた。

