長浜城にようやく帰ってから、一ヶ月。
三成が部屋の外で声をかけてくる。秀吉殿が入るように促すと、三成が襖を開ける。
何故か不機嫌そうなその顔に秀吉殿は首をかしげる。
「殿、お客が来ております。」
「客?誰じゃ?」
「その…」
三成が言おうとしたその時、三成が半分しか開けていなかった襖を全て開け、男が入ってくる。
見たこともないその男は、背が高く筋肉質なその体とは裏腹に、優しそうな顔をしていた。
年はそれがしと同じくらいだろうか。
「官兵衛!」
秀吉殿の声がして、一瞬自分が呼ばれたような気がしたが、一文字目が違う。官兵衛?
「おお!秀吉殿!お久しゅうございます。なかなかこの石田殿が拒むものですから、ここまで無理矢理押し掛けてしまいました。」
「いや殿と友達だと言うものですから、まず確認を取らなくては…と思いまして。」
「そーかそーか。すまんな三成。こういう男なんじゃよ。もう大丈夫じゃ。仕事に戻って構わん。」
そう言われて三成は渋々と帰っていった。本当はどんな男なのか見極めたかったのだろう。三成も秀吉殿が好きだからな。信用できるか見たかったのだろう。

