「そりゃ秀吉殿の味方ですけど、危ないことは駄目です。そういうのはそれがしがやることです。」
「そ、そんなに危ない事はしとらんし…」
「いやいや、この間の朝倉景建の時だって、わざわざ斬り合いにしなくたって良かったんじゃ。己の力を誇示したかったんじゃろう?」
明智殿はにやにやと秀吉殿をからかう。
「うっ…。そ、それもありますけど…。で、でもあの時は少しも怪我してないし…。」
「そういう問題じゃありません。怪我してからでは遅いのですよ?」
そういうと秀吉殿はむっと可愛らしく怒る。
「そもそも!明智殿も半兵衛も少々わしを心配し過ぎじゃ!わしはそう簡単に死なん!」
ふんっとする秀吉殿はそれはそれは可愛らしくて、思わず笑顔になってしまう。
惜しむらくは、これが明智殿の前でなければ抱き締めたのに。
「まぁよい。秀吉、いつかお主は余に嫁ぐのだから、余り怪我をするなよ。」
「なりませんから!」
「威勢がいいな。さて、そろそろ柴田殿のところへ行くか。それと余り柴田殿を挑発するなよ?面倒はごめんじゃからな。」
「へーい。というか、それを言いに来たのでしょう?」
明智殿はふっと少し笑って、襖を開け去っていった。
案の定、首の怪我はなんだと大殿に聞かれた秀吉殿は、野良犬に噛まれたのだとはぐらかした。
大殿は恐らく勘づいておるだろう。
しかしそれ以上追求しなかった。

