「ところで何の用です?」
「そんなに嫌うな。これでもお主を心配してきてやったのだぞ?」
「心配?」
そう言うと明智殿は、手で自らの首元を触る。
「先程、柴田殿に用があって行ったら、何やら物騒な雰囲気がしてな。少し覗いてみたら、お主の首に一益の刀があったのでな。心配じゃから様子を見に来てやったのじゃよ。」
上から物事を言っているが、なんだかんだこのお方も秀吉殿が好きなのだ。秀吉殿は明智殿はからかっているだけだと思っているようだが。
「別にこの程度心配されるほどの怪我では…。」
「そもそも女子がそんな傷作ること自体間違っておる。」
「それがしは武士ですから。」
「いえ、秀吉殿。お言葉ですが、傷を作られるのはそれがしも反対です。」
「なっ!半兵衛!お主はわしの味方じゃろう!」
それがしが口を挟んだことにより、場の空気がようやく和む。最近の明智殿は前よりずっと危ない雰囲気だった。だからこそ、あまり雰囲気を悪くはしたくなかった。

