「でも、あのように危ない事は控えて下され。」
「危ない事?しかしあれは…」
不思議そうな顔をしてとぼける秀吉殿に、わざとため息をつく。
「ああして、柴田殿か滝川殿が怒って斬りかかってくるのを誘っていたのでしょう?それがしが気づかないとでも?」
秀吉殿は苦笑いをして、バレていたかとこぼす。
「勘の鋭い奴は面倒じゃのぉ。これが敵でなく、味方で良かったわい。」
苦笑いしつつも少し嬉しそうな秀吉殿。
可愛らしいお顔をしながら、本当に考えることがえげつない。
しかしその狂気的な考え方が、今回のように自らの身を危険に晒すのは止めて欲しい。
「秀吉殿がいなくなっては、それがしは生きていけないですから。」
「半兵衛は大袈裟な奴じゃのぉ。」
けらけらと秀吉殿が笑っている。
「それがしは本気ですよ?」
ゆっくりと秀吉殿のおでこにおでこをつけると、恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「秀吉殿は男としている時は頼りがいのある、強いお方なのに、女になると本当に可愛らしいですね。」
「…男としている時は、大殿を参考にしてきたから。」
ああ、そうか。
確かに秀吉殿が男としている時は大殿に似ている。
口調も静かに怒るところも、殺気の出し方も。
大殿によく似ている。

