「己の立場が分かっていないようだな。今すぐにでもお前の首など切り裂けるのだぞ?」

「ははっもう少し切ってるじゃないですか。何を今さら。」

「これ以上斬られたくなければ、謝れ。」

そう滝川殿が凄むと、秀吉殿はにやっと不敵に笑いわざと哀れなものでも見るかのような目をする。

「斬れるもんなら…」

そう口にした瞬間何かが当たり宙を舞って飛んでいくのが見えた。

「斬ってみれば?」

その瞬間刀が畳の上に刺さっていた。

滝川殿の手には刀が無く、唖然としている。
秀吉殿は刀をしまい、にこやかにしている。

恐らく秀吉殿が刀を抜き、滝川殿の刀を弾き飛ばしたのだろう。まったく見えなかったが。

まったく見えなかったのは、滝川殿も柴田殿も同じのようで二人とも微動だにしない。

「おやおや斬られないのですか?」

小馬鹿にしている秀吉殿だけがこの場で動ける。

「ふふっ。でしたらお暇させてもらいますね。お酒御馳走様でした。」

そう言って秀吉殿が出ていくので、動かない足を無理矢理動かし追いかけた。