「女狐。……柴田殿に謝れ。」

「猫やら狐やら獣が多いのですねぇ。」

「おい。聞こえなかったのか?謝れ。叩き斬るぞ。」

滝川殿は静かに詰め寄る。
秀吉殿の首からは更に血が垂れ流れていく。しかし秀吉殿はそれでも動こうとしなかった。

「刀をしまって貰えません?こちらとしても、これ以上仲を悪くしたくないのですが。」

口角を上げ不適に笑う秀吉殿に、それでも滝川殿は顔を崩さなかった。

「…お前が謝ればすむ話だ。」

「ほう。謝ればねぇ。」

ピンと張りつめたこの空間に、秀吉殿と滝川殿の殺気が入り交じる。息など吸えたものではなくて、辛くてしかたがない。

「謝っても構いませんが、その時はそれがしも怪我を追わされたので、滝川殿に土下座で謝ってもらいましょうか。」

「は…?」

「それが出来ぬと言うなら、謝りません。」

そんな屈辱的なことを滝川殿が受け入れられるはずがない。そんなこと秀吉殿は分かっているはず。
それなのにそうやって挑発するなど、意味が分からなかった。