「ほう、首を、のぉ。」

怒っているのか読めないその大殿の声に朝倉景建は必死に首を取るのは大変だったのだと訴えかけている。

「み、見逃してくだされ!」

「秀吉、お主に一任する。」

「……承知しました。」

そう言って秀吉殿は迷うことなく刀を抜いた。

「えっ?羽柴殿!?」

朝倉景建は秀吉殿に恐れおののき、後退りしていく。

「仲間を殺して売るような奴は死んだ方が世の為じゃ。」

「それがしは!織田家のために!」

「何が織田家のためだ。己の命惜しさにではないか。」

そう言って頭を擦り付ける朝倉景建を無理矢理立たせる。

「お主らのような奴に、切腹など勿体無い。わしが叩き斬ってやろう。」

「なっ!」

「ただ斬っては面白くない。わしに勝てたなら見逃してやろうではないか。四人同時でも構わんよ。」

「…!い、今言った事本当でございますか!」

「ああ。武士に二言はない。」

「我らかて女子に後れをとるわけがない!」

秀吉殿は甲冑を脱いで小姓に渡し、刀を下段に構える。
一見隙だらけに見えるその構えは、一歩踏み込むと隙など微塵もなかった。